村尾隆介:
こんにちは、玉山さん。
いつも玉山さんの身体を見ては、
「がっちりしているなあ。ヨットで鍛えられたものなのかな?」と
思っているのですが、
実際はどうなんですか?
玉山貴章:
「ラグビーやってたの?」
「柔道やってたの?」と、
初対面の方には、よく尋ねられます。
そこで「ヨットです!」と答えると、
「あぁ、ヨットね!」と、
お約束のようにオールを漕ぐしぐさを大抵の方がされます。
それボートです!(笑)
ヨットはセイル(帆)に風をはらんで、
海や湖の上を帆走るマリンスポーツです。
体ががっちりしているように見えるのは、
大学ヨット部で4年間みっちり鍛えられたお陰だと思います。
大学時代の練習場所であった江の島沖は
水深が約100mあって、
重たいアンカー(錨)をあげるのに1回5分くらいかかりました。
当時は上下関係がかなり厳しく、
ヨットに乗せてもらえなかった下級生の頃は
多い時で1日数十回アンカー上げをしたこともありました。
非常に辛く、悔しかった思い出がありますが、
それも「体を鍛えるチャンス」と考えを変え、
年間200日以上黙々とこなしたことも
今となっては懐かしい思い出です。
体だけではなく心のベースも、
すべてヨットを続けてきたことで培われたと思っています。
村尾隆介:
その競技としての「ヨット」。
欧米では、もっと気軽に始めたり、
接したりすることができるスポーツだと思います。
日本で競技人口が
伸び悩んでいる原因は何だと思いますか?
玉山貴章:
ヨットに高級なイメージがあり、
それがハードルを上げていると思います。
でも、取り組み方次第では実はゴルフよりも、
ずっとお金をかけずにできるスポーツなんです。
クルーザーを持っていて、
一緒に乗ってくれるクルーを探している方は、
全国のハーバーにたくさんいます。
ヨットを始めるにあたり、
ヨットを買う必要がないということも、
実際はあまり知られていません。
たしかに、目には見えない風に対し
帆を操って帆走る難しさはあります。
でも、そこは車の運転と同じで
コツさえつかめば楽勝です。
若いうちは競技として、
年齢を重ねればクルージングに切り替えて
という楽しみ方もできますので、
まさに生涯スポーツの王様です。
日本は周囲を海に囲まれた島国です。
世界的に見ても絶好の環境です。
もっともっと、この素晴らしいスポーツが
普及して欲しいです。
村尾隆介:
お金が掛かるというイメージは、
たしかにあると思います。
実際はそれほど掛からないとしても、
それは世に伝わっていませんね。
ヨットを題材にした漫画やドラマがあれば、
そのへん一気に解決できるんですけどね。
あとはヒーロー・ヒロインの誕生や、
そのメディア露出。
バドミントンやビーチバレー、
カーリングやフェンシングも、
それがあって存在感が増したと思います。
あとは玉山さんの
「心も鍛えられた」という話がありましたが、
「教育としてヨットはいい」
「ヨットをしていると就活が有利」
などというのがあったらいいなと思います。
そのへん実際は、どうなんですか?
玉山貴章:
ヨット競技は自然に左右されるウェイトが
非常に高いマリンスポーツです。
天気などコンディションを予測したり、
それに応じて判断をしたり・・・、
でも自然相手だから一筋縄にはいかない。
だから、他のフィールドスポーツよりも
忍耐力が培われるのではないかと思います。
また、もしもヨットが転覆してしまう、
船の部品が壊れるなど、
海上で起こるトラブルは
全て自己責任で解決していかなければなりません。
そういった意味では判断力や根性も養われることでしょう。
小さいころからヨット競技を頑張っていると
「進学に有利」という側面もあります。
少子化も手伝ってヨット部のある学校は、
どこもやる気のあるヨット経験者を欲しがっています。
受験勉強して進学するのが一般的ですが、
ヨット競技を一生懸命頑張って一定の結果を出し、
それを武器に有名校に進学するというのも、
ひとつの手段だと思います。
その後の就職活動に関しても、
スポーツを4年間やり通したということが有利に働きます。
「タテ社会の運動部で4年間頑張った」ということは
採用企業に、礼儀正しい、ガッツがある、粘り強い、
という印象を持ってもらえることが実際に多いです。
社会に出た後もヨットを続ければ、
マイナースポーツゆえ、
他のスポーツに比べて横のつながりや絆も強く、
その付き合いが比較的長く続く世界だとも感じています。
東日本大震災の後も、
全国各地のセイラーが
被災された学校や団体にヨットや道具を寄付したり、
オリンピックセイラーなどが現地入りし
ボランティア活動を行ったりもしました。
私も運送会社ということで
微力ながら現地に数回足を運び、
ヨットの運搬をさせていただいたりもしました。
村尾隆介:
その玉山さんの会社である<丸玉運送>が、
このたびヨットを運ぶことだけに特化したサービスを開始しました。
その名も<JUSTヨット運送>(笑)。
まさに“ヨットだけ”ですね!
この事業は、どんな経緯で生まれたのですか?
玉山貴章:
私がヨットを始めたのは
父親の影響で小学生のころからです。
競技として本格的に取り組んだのは
大学ヨット部に入ってからです。
私が進学したヨット部は強豪校で、
年に数回遠征に行くのですが、
その際ヨットをトラックに載せて、
全国のハーバーに運んでいました。
そんな時、私は
「父親が経営する会社のトラックでヨットを運ばせてください」と、
監督にお願いしたことがありました。
これが弊社の初めてのヨット運搬だったと思います。
大学卒業後、
私は父の経営する会社に入社しましたが、
社会人になってもセーリング活動は続けていました。
毎週末、各地のヨットハーバーで
先輩・後輩・仲間と会って交流が続く中、
クチコミでヨット輸送のオーダーをいただけるようになりました。
ヨットの運搬の世界は、
良くも悪くも洗練されているとは言い難いです。
初めてヨットを運ぶドライバーに、
しっかり注意事項を伝えていない運送会社もいます。
それを聞いていても、
約束やルールを守らないドライバーもいます。
依頼側もトラックは時間通りに来ているのに、
大会の進行状況により、
連絡もなしにそのドライバーを
平気で半日以上も待機させるようなことも多々あります。
運送費についても、
各運送会社の基準はバラバラ。
サイズやスケジュールがよくわからないものは、
やりたくないのが運送会社の本音です。
残念なことですが、一般的な運送会社は
初めての顧客や不得意な荷物には、
根拠なく不当な見積りを提示することもあります。
私はヨットの選手でもありましたし、
現在は運送会社という立場なので、
どちらの事情も都合もよくわかります。
だから、双方の困りごとを解消することができると思いました。
「選手に余計な気苦労や不安を感じさせたくない」
と純粋に思いました。
だから、私たちはこのたびヨット運びの事業を本格化し、
それを<JUSTヨット運送>と名づけました。
目的はヨットの輸送を通じ、
「セーリング競技の普及・発展に貢献すること」です。
「好きこそモノの上手なれ」です。
ヨットが好きなスタッフが多い会社なので、
きっとお役に立てるのではないかと思っています。
村尾隆介:
最終的なゴールは、どこにありますか?
どこまでいったら、このブランドは成功と呼べるものになると考えていますか?
玉山貴章:
どこまでやってもゴールはないと思います。
実際どこの運送会社で運んでも同じように思われるかもしれませんが、
弊社サービスのメリットを感じていいただけるよう、
また楽しんでいただけるよう毎年ブラッシュアップしていきたいです。
安全や確実性等、輸送品質はもちろんのこと、
ヨット界に明るい話題を提供したり、
セイラーのみなさんを楽しませたり、
競技人口増加にもつながるような。
ただ運搬させていただくだけでなく、
将来は何か話題性やエンタメ性を打ち出していけるといいなあと思います。
たとえば公道やヨットハーバーでセイラーはもちろんのこと、
一般市民の方にも楽しんでいただけるようなデザインのトラックを導入したり、
またヨット運搬時のユニフォームは、それ専用のものだったり。
今までとは少し違った楽しいヨット大会を開催したりするのもいいですね。
弊社のトラックを利用してもらうことで
ヨット界やヨットハーバー、みなさんの気持ちを明るくし、
ヨットを運搬させていただきながら
微力ではありますが、
この世界を盛り上げていければこれほど嬉しいことはないですね。
普段は精密機械などを運ぶことを得意とする<株式会社丸玉運送>の中で、社内ベンチャーともいえる新規事業で、ヨットの運搬だけに特化した<JUSTヨット運送>を立ち上げた功労者。
自身も大学体育会系ヨット部に、かつては在籍。インカレ個人戦、団体戦などで優勝。また同じく丸玉運送に在籍する弟と共に、学生時代にペアを組み470級世界選手権にも出場したことがある。
現在は、日本セーリング連盟(JSAF)会員。海に関する保有資格:日本セーリング連盟(JSAF)認定ジャッジ資格、日本体育協会公認スポーツ指導者登録セーリングコーチ資格、小型船舶操縦一級免許などを保有する。
海とヨットをこよなく愛す男、ここからヨットの世界への恩返しを本格化する。
国内外でベストセラーを連発し続け、ビジネスの世界から大きな注目を集めるビジネス書作家。本業である小さな会社専門のブランド戦略のコンサルタントを通じ、今回の<JUSTヨット運送>のように、事業自体が社会貢献的といえるようなブランドを全国各地でプロデュースしている。
スターブランド株式会社の共同経営者。講演会やセミナーは、そのわかりやすさとエンタテイメント性で大人気。「日本のプレゼンキング」と呼ばれ、全国で年間100本以上のスケジュールをこなす。
その一方で現役アスリート。世代のTOPランナーとして、世界のマラソン大会を転戦してまわる。
著書に・・・
啓文堂ビジネスブック大賞 2011第3位に輝いた『安売りしない会社はどこで努力しているか?(大和書房)』
代表作で、土井英司氏主宰のビジネスブックマラソンを受賞した『小さな会社のブランド戦略(PHP)』
『だれかに話したくなる小さな会社(かんき出版)』『マイ・クレド (かんき出版)』『営業部は今日で解散します(大和書房)』『29歳からのルール(明日香出版)』『小さな会社のビジョンのつくり方、浸透のさせ方(PHP)』『ビジネスは毎日がプレゼン。(同文館)』『「変える」は会社の毎日のお仕事(朝日新聞出版)』・・・など。
スターブランド社HP: http://www.starbrand.co.jp/
村尾隆介公式HP: http://www.ryumurao.com/